- ワクチンって聞いたことないなあ。
- 「FIP」だって!
- やばくない?
猫コロナウイルスによって引き起こされる病気は「猫伝染性腹膜炎(FIP)」です。
症状によって「おなか」や「胸」に水が溜まる「ウエットタイプ(滲出型)」と、そうはならず他に病変を起こす「ドライタイプ(非滲出型)」に分けられています。
この病気ではウイルスが感染しても発症するのは1割くらいのため、今の新コロナ同様、人知れずに感染していることもあります。
人の新コロナウイルス同様、猫には恐ろしいウイルスです。
解説
猫伝染性腹膜炎(FIP)
この病気ではウイルスが感染しても発症するまでは、多数の免疫作用があるため、複雑な経過をたどり、発症すると予後不良、高い致死率となります。
感染の有無は血液の検査で可能です。
日本ではワクチンがないため、周りに感染した猫を置かないことが大事なこととなります。
(ワクチンは海外では販売しています。しかしWSAVAという獣医の国際機関では当該ワクチンの使用を推奨していません。)
FIPを患っている猫や子猫は、以下のようなさまざまな症状を示します。
沈うつ、体調不良、発育不良、体重減少、体毛のごわつき、黄疸、腹水、胸水等。また3歳を過ぎると発症率は急激に低下するとされています。
3歳を過ぎれば一安心というところでしょうか。
典型的な症状が出ないで、臨床診断できない場合は、死後の病理検査で診断がつくこともあります。
ハートワン動物病院での対応
治療に関しては可能な限り各症例に合わせて対症療法を含め積極的な治療を実施します。
今回は消毒に関して簡単に説明します。前回解説した「ビルコン」で消毒します。
FIPの猫ちゃんが入った診察室は診察後、特に入念にビルコンでの消毒を実施し、室内はビルコンを噴霧し、30分以上の使用禁止としています。
使用したタオルやエリザベスカラー等はビルコン液に1時間以上浸漬します。
ビルコンで消毒したタオルは他の動物に使用したタオル等と同様に「次亜塩素酸ナトリウム」を用い、専用の洗濯機を使用して消毒だけの洗濯機を回します。
脱水した後、別の洗浄専用の洗濯機を用いて洗濯します。
更に洗濯後、乾燥機を用いて熱風による乾燥消毒を実施しています。
ウイルス、細菌、真菌はゼロになります。
次回から微生物学的見地から見た今の「新コロナウイルス」についてわかりやすい言葉で微生物の解説した<特集>を組むことにしました。
次回予告
特集
今回から「ウイルスに関する特集」を組むことにしました。
「ウィキペディア」で「コロナウイルス」を検索すると「ゲノムとしてリボ核酸 (RNA) をもつ一本鎖プラス鎖RNAウイルス」と書かれています。
わからない言葉ばかりです。
特集では「①ウイルス」「②ゲノム」として「③リボ核酸 (RNA)」 をもつ「④一本鎖」「⑤プラス鎖」「⑥RNAウイルス」等について説明します。
- ウイルスの感染:バクテリアとどこが違うの???
ウイルスはそれ自体で増殖できません。
それゆえ生物に「ウイルスは入れない」という考えもあります。
しかし、微生物学の教科書に詳細に記載されていることから医学的には生物として扱われているのではないかとも考えられます。
続く・・・