Case95 セルトリ細胞腫

Case95 セルトリ細胞腫

犬(MIX)、10歳、雄

潜在精巣で精巣を摘出した症例を紹介します。


潜在精巣とは、子犬の頃の適切な時期(~6か月齢頃)に精巣が陰嚢という袋の中に下降せず、鼠径部の皮下や腹腔内に留まってしまう病気です。皮下の潜在精巣は直接触って分かることが多く、腹腔内の潜在精巣は超音波検査で確認する方法があります。「停留精巣」、「陰睾」とも呼ばれます。猫よりも犬に多い病気で、片側もしくは両側の精巣が下降しないこともあります。原因は遺伝性だと言われています。


潜在精巣(特に腹腔内)は陰嚢内と比較して高温となるため、精子形成能が無く、10歳前後になると適切な位置にある精巣と比べて腫瘍の発生率が約13倍となります。今回の症例も、潜在精巣が大きく腫れて、腫瘍化していることが分かり、手術で摘出することとなりました。

写真の左側の精巣は皮下に存在しています(赤丸)。右側の精巣は正しい位置にあります(青丸)。

正しい位置にある精巣は萎縮していました。

潜在精巣は腫大しています。
病理検査の結果、セルトリ細胞腫だと分かりました。


犬ではかなりよく見られる腫瘍で、乳房が雌のように膨らむ、反対側の精巣の委縮、脱毛などの症状が出ることや、他の部位へ転移することもある腫瘍です。


精巣の腫瘍はよく見られますが、去勢手術で100%予防できるので、若く健康なうちに去勢手術を検討しましょう。去勢手術をするかどうか迷っている飼い主さん、ご家族で結論が出せない場合はご相談ください。