動物から人への感染(人獣共通感染症「ズーノーシス」)
主な動物由来感染症に次のものがあります。
- パスツレラ症
- Q熱
- オウム病
- トキソプラズマ症
- 猫ひっかき病
- 重症熱性血小板減少症症候群(SFTS)
- 狂犬病
① パスツレラ症
Q:人も感染しますか?
A:現在Pasteurella.multocida, P.canis, P.dagmatis, P.stomatis の4種類が原因細菌として確認されています。P. multocida,をはじめ、人にも感染することが確認されています。
② Q熱
Q:症状はどういうものですか?
A:Q熱という病名は、「Query fever =不明熱」に由来しています。原因不明の熱性疾患として発見され、後にリケッチアの一種Coxiella burnetii による感染症であることが明らかにされています。動物の糞尿や羊水に病原体が含まれているため、ペットの出産時に感染することがあります。感染しても発症する人は50%程度で、発症した場合はインフルエンザに似た症状(高熱、悪寒、筋肉痛ほか)や肝炎症状を示し、心内膜炎を伴う重症例もありますが、症状が出ない場合が多いです
③ オウム病
Q:鳥から感染しますか?
A:オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci )による人獣共通感染症です。病原体は鳥類(インコ、オウム、鳩など)の糞便に出てくるため、乾燥した糞便の飛沫を吸い込むと感染します。動物ではインフルエンザに似た症状(高熱、悪寒、筋肉痛ほか)がみられ、まれに死亡することもあります。人ではオウム病の潜伏期間は1〜2週間で、急激な高熱と咳嗽で発症します。軽症の気道感染から、肺炎や髄膜炎までの多様な病態があります。血清診断の結果は通常治療開始時には出ていないので、明らかに鳥との接触歴がある場合は、オウム病による肺炎を第一に考えて、直ちに治療を開始する必要があります。
④ トキソプラズマ症
Q:どんな病気ですか?
A:主として猫が感染源です。ほとんど無症状ですが、幼い動物では肺炎や腸炎を起こすこともあります。猫の糞便中に病原体が出てくるので、人はこれを飲み込むと感染します。人では通常は無症状ですが、まれに眼や脳の炎症を起こします。
⑤ 猫ひっかき病
Q:看護師さん怖くないですか?
A:怖いですが、ひっかかれないように注意しています。
Q:猫にひっかかれて大丈夫ですか?
A:大丈夫ではありませんが、ひっかかれるのは仕方ないことなので注意して猫を扱っています。猫ひっかき病は、バルトネラ・ヘンセレ Bartonella henselaeという細菌によって引き起こされる感染症で、動物同士では感染した猫にひっかかれたり咬みつかれたりすることで感染し、多くの場合、かさぶたを伴う皮膚の隆起やリンパ節の腫れがみられます。
⑥ 重症熱性血小板減少症症候群(SFTS)
Q:何が原因で感染するのですか?
A:原因はSFTSウィルス(ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類されるウィルス)です。SFTSウィルスに感染したマダニに刺されることで、感染します。感染した犬・猫・人からの感染も報告されています。
Q:どんな症状ですか?
A:人では発熱、頭痛、全身倦怠感、下痢や嘔吐等の消化器症状、意識障害等を発症し、血液検査で血小板減少や白血球減少が、生化学検査によりALT、AST、LDH、CKの上昇が認められています。人で死亡率20%、潜伏期間は1-2週間とされています。犬猫も人と同様な症状を示すとされていますが猫の死亡率が高く、犬では猫ほど高くないとされています。
⑦ 狂犬病
Q:日本にいないのに予防しなければならないのですか?
A:日本では罰則付き法律で狂犬病の予防接種が義務付けられております。また、狂犬病は日本の周辺国を含む世界のほとんどの国・地域(150か国以上)で依然として発生しています。狂犬病の清浄国は、日本、英国、豪州、ニュージーランド、スカンジナビア半島の国々などごく部一部です。更に平成29年度において、一般社団法人ペットフード協会調査による狂犬病予防注射実施率は50.7%です。WHO は犬の狂犬病ワクチン接種率の目標を70%にするよう勧告しています。現状では70%の接種率に達していないため、日本は危険な状態にあります。