新型コロナ~ネズミ

新型コロナ~ネズミ

代表的な病気・病害に次のものがあります。

  1. 新型コロナウイルス感染症
  2. サーズ(SARS)
  3. インフルエンザ
  4. 花粉症
  5. MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
  6. O157病原性大腸菌(腸管出血性大腸菌)感染症
  7. ネズミ由来の感染症

① 新型コロナウイルス感染症

Q:犬にも感染しますか?
A:犬では明確な症状が出たと確認はされていませんが、猫では呼吸器症状・消化器症状があったとの報告があります。

Q:予防はどうしたらよいですか?
A:新型コロナウイルスがペットから人に感染した事例は報告されておりません。しかし、もともと動物由来感染症と考えられているので予防のため、動物との過度な接触は控えるとともに、動物に接触した後は、まめな手洗いやアルコール等で手指の消毒を行うようにしてください。

② サーズ(SARS)

Q:どんな病気ですか?
A:重症急性呼吸器症候群(SARS: severe acute respiratory syndrome)のことで、2002年11月16日に、中国南部の広東省で患者が報告されました。北半球のインド以東のアジアやカナダを中心に感染拡大、WHOから2003年7月5日に終息宣言が出されるまで、32の地域と国にわたり8,000人を超える症例が報告されました。SARSの致死率は全体としてはおよそ9.6%(2003年9月)と 推計されています。24歳未満では1%未満、25〜44歳で6%、45〜64歳で15%、65歳以上で50%以上となっています。

③ インフルエンザ

Q:人のインフルエンザが犬にうつりますか?
A:インフルエンザウイルスの感染に関しては、ウィルスが細胞に入るときレセプターという装置を介する必要があります。そのため人型は人、犬型は犬にしか感染しないのが原則です。人のインフルエンザウイルスは犬に感染しません。しかし、インフルエンザウイルスは変異しやすいのでその原則が通じないことがあります。それが最近耳にする高病原性インフルエンザウイルスが鳥から人に感染するといったことです。鳥の中で変異が起こり、鳥→人への感染もあり得るということです。

インフルエンザとは、インフルエンザウイルスに感染して起こる感染症です。インフルエンザウイルスは抗原性の違いからA型、B型、C型、D型の4種類に分けられます。人にはA型、B型、C型が感染し、ヒトに流行を起こすのは、A型とB型のウィルスです。A型はヒト以外にも、ブタ、ウマなどの哺乳類やカモ、ニワトリなどの鳥類に感染します。一方、D型(2011 年,米国オクラホマ州で発見された新しいタイプのインフルエンザウイルス)は家畜のみ感染します。

人のインフルエンザについて

人にはA型、B型、C型が感染し、A型、B型のみヒトに流行を起こします。ワクチンのあるのはヒトに流行を起こすA型とB型のみです。A型はヒト以外にも、ブタ、ウマなどの哺乳類やカモ、ニワトリなどの鳥類に感染します。インフルエンザウイルスの表面には10nm程度の長さの2種類のスパイク構造が存在しており、それぞれヘマグルチニン(血球凝集素、HA)、ノイラミニダーゼ(NA)と呼ばれています。A型とB型が両構造を有し、C型はHE(ヘマグルチニンエステラーゼ)と呼ばれる、HAとNAの両方の役割を演じる1種類のスパイク構造を有しています。A型はさらに、HA(赤血球凝集素)とNA(ノイラミニダーゼ)という糖蛋白が、H1 から H16 までと N1 から N9 までのすべての構造を別々に保有しています。これにより、多くの亜型(理論上は16×9通り)に分けられます。これらのウィルスが他の水きんや家きんや家畜、そしてヒトでの A 型インフルエンザウイルスの供給源となります。B型も同様のHA(赤血球凝集素)とNA(ノイラミニダーゼ)は、1つの亜型しかありません。更にC型は表面のHE(ヘマグルチニンエステラーゼ)は1つの糖蛋白しか持っておらず、やはり1つの亜型しかありません。

日本では今まで4種類、タミフル、リレンザ、ラピアクタとイナビルの抗インフルエンザ薬が使われていました。これらはいずれも先にお示ししたノイラミニダーゼ阻害剤です。2018年3月に新しい抗インフルエンザ薬のゾフルーザが発売されました。これは従来のノイラミニダーゼ阻害薬と異なり、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ(Cap-Dependent Endonuclease)阻害によりウィルスの増殖を抑制する新しい作用機序の薬剤です、ウィルス量を早期に大幅に低下させることが示されました。

動物に感染するのか、犬猫他に関して

A型はヒト以外にも、ブタ、ウマなどの哺乳類やカモ、ニワトリなどの鳥類に感染します。

人と動物の伝搬の有無に関して

インフルエンザの伝搬は主に渡り鳥によって全世界に蔓延します。

動物のインフルエンザについて

D型(2011 年,米国オクラホマ州で発見された新しいタイプのインフルエンザウイルス)は家畜へのみ感染します。ウシ、ブタ以外でも、ヒツジ、ヤギ、ラクダで抗体陽性個体が見つかっています。

犬のインフルエンザ

人のインフルエンザと同じように全身症状を示します。ただし、人型と違い、犬型となったウイルスですので、犬同士で感染が広がります。

ハートワン動物病院では犬のインフルエンザ対策として、該当する患者様に遭遇した時は診察後、スタッフは手指の消毒、場合によっては診察服の交換、診察室の徹底した消毒(ビルコン消毒液の噴霧後、一定時間出入り禁止)、患者様の通過した後の消毒を実施して他の患者様への感染を防止します。患者様のインフルエンザ対策としては、くしゃみ、発熱、流涙や鼻水がみられる犬との接触を避けてください。(※患者様とは動物のことです。)

犬インフルエンザは犬パラインフルエンザとは別ウィルスです。名前が類似しているだけです。パラインフルエンザウイルスはパラミクソウイルスであり,1型,2型,3型,および4型に分類されます。パラインフルエンザウイルスに対してはワクチンがあります。一方、インフルエンザウイルスはオルトミクソウイルス科に属します。

犬インフルエンザの詳細

犬インフルエンザは馬インフルエンザの原因となるA型インフルエンザウイルスのいくつかの亜型(H3N8インフルエンザAウイルス)を原因とし、米国で2004年に報告されました。更に2015年のシカゴでの大発生は別の犬インフルエンザウイルスH3N2に起因し、このウイルスにこれまで曝露したことがなかったため、急激に伝播した可能性があります。犬のインフルエンザの症状は人のそれとよく似ており、犬でもしつこい咳が10日から30日程続くことがあります。米国では既に犬インフルエンザに対するワクチンが市販されております。しかし、全米獣医師会 (AVMA)によると、「他の犬や、猫(H3N2の場合)に伝染させないために、犬インフルエンザに罹患している犬は隔離するようにしてください」と注意喚起しています。

④ 花粉症

Q:犬にも花粉症はありますか?
A: サルの花粉症はニュースに報じられて有名です。犬も猫も条件によって花粉症になります。花粉症対策については、ご相談に乗ります。

Q:くしゃみをするのですが、花粉症ですか?
A:くしゃみが続くようだと花粉症の可能性があります。

Q:今花粉は飛んでいますか?
A:花粉にも色々な種類があります。人間の花粉症同様、犬猫でも春は杉・ヒノキ秋はブタクサ、そのほかイネ科植物などが原因で花粉症になり得ると考えられています。日本では人で約50種類の植物の花粉が花粉症を引き起こすといわれており、人と全く同じアレルギーの原因とは言い切れませんが、犬猫でもかなりの数の植物の花粉が花粉症の原因になりうると考えられます

⑤ MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)

Q:それって何ですか?
A:MRSA とは、Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の略で、1961 年に英国で初めて報告され、1970 年代以降は世界各国でヒトにおけるMRSA 感染の増加がみられ深刻な問題となりました。MRSA は従来のメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)とは異なり、特有な細胞壁合成酵素(ペニシリン結合蛋白)PBP2を作ることでメチシリン耐性を獲得しており、ペニシリン系の抗生物質が効かないブドウ球菌です。現在人ばかりでなく、家畜やペットにも確認されています。社会的な問題になりつつある耐性菌です。

⑥ O157病原性大腸菌(腸管出血性大腸菌)感染症

Q:犬猫が感染しますか?
A:人同様に感染し、発症した後、一部の個体では菌が留まり、多くの個体では菌はいなくなると考えられます。

犬、猫の大腸菌O-157保有について

1996~1998年犬と猫で大腸菌O157保有について調査がされております。ごく少数なら保有する犬や猫が存在しました。腸管出血性大腸菌を実験的に犬に投与した場合、症状を示さなかったとの報告もあれば、人と同じように溶血性尿毒症症候群(HUS)の症状を示したとの報告もあります。
また大学での実験で、人の腸管出血性大腸菌のO-157を犬へ給餌投与し、臨床症状、細菌学的ならびに血液学的性状の解析を行ったところ、菌の犬腸管内への定着および体内臓器への感染を示す徴候はいずれも認められませんでした。いっぽう、投与後数日間は犬糞便中に生菌の排泄が認められました。犬の匹数が4頭と少ないのですべての犬で菌の定着が無いかは不明です。

牛の大腸菌O-157保有について

農林水産省の調査で平成16年から18年にかけて、と畜場に搬入された牛の直腸内容物を検査しました。その結果1,017頭中114頭(11%)がO-157陽性でした。約1割の牛ではO-157が陽性ということです。「牛」は気を付けなければならないようです。
腸管出血性大腸菌の主な保菌動物は牛・羊・山羊などの反芻動物で、腸管内に住み着き断続的に排泄されます。これらの家畜は症状を示さないことが多く、外見上、菌を保有しているかどうかは分かりません。

O-157大腸菌とは

一般の大腸菌は健康な人の大腸内に生息し、特に病気を起こすことはありません。ただし、一部の大腸菌は下痢を引き起こします。これらの大腸菌は「下痢原性大腸菌」あるいは広義の 「病原性大腸菌」と呼ばれています。これらは病気の起こり方から5種類に分けられます。
O-157は腸管出血性大腸菌(EHECあるいはVTECと略称)に分類されます。ちなみにO-157とは、大腸菌の持つO抗原(大腸菌の代表的な抗原)のうち157番目のものを意味し、いわば大腸菌の持つ背番号のようなものです。この菌は、1982年にアメリカでハンバーガーが原因となった食中毒が契機となって発見された菌で、比較的新しい食中毒原因菌です。
この腸管出血性大腸菌の問題はO-157が「ベロ毒素」を有することです。「ベロ毒素」は一部の赤痢菌が産生する志賀毒素と同様のものです。この毒素は腸管上皮細胞に作用して出血性の下痢を起こし、一部は血液中に吸収されて全身に移行します。腎臓にベロ毒素が作用すると、溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こすほか、脳では急性脳症が引き起こされます。
日本でもこの菌の集団発生が散発しています。問題は、この菌は食中毒菌の中でも感染力が特に強いことです。一般の食中毒原因菌の場合は10万~100万個以上の菌を摂取しないと食中毒は発症しませんが、O-157の場合は100~1,000個摂取すると発症すると考えられています。

人に感染した場合の症状

汚染食品(菌)をどれくらい摂取するかにもよりますが、潜伏期は1~10日と一般食中毒に比べてかなり長いです。このことが、原因食の追求を困難にしています。感染すると、一定の潜伏期の後、下痢、吐き気、嘔吐、 腹痛など一般の食中毒と区別がつかないような症状で始まる例が多いです。10%程度の例では、悪寒、発熱さらに上気道感染症状を伴うなど風邪と間違えるような症状で始まることもあります。やがて典型的な例では血便が見られ、鮮血様の血便となります。少し遅れて溶血性尿毒症症候群(HUS)や血栓性血小板減少性紫斑病、さらに痙攣や意識障害など 脳症を呈する例もあり、死に至ることもあります。いずれも本菌の産生するベロ毒素の作用(本質的には蛋白合成阻害により、標的細胞を殺す)によります。子供や老人の場合は、重篤になりやすいです。死亡率は500~1,000人に1人程度です。

感染予防策

一般的には、食中毒の予防の基本を守ることが大切で、逆に基本を守ればこの菌による食中毒は必ず予防できます。簡単に述べますと、(1)できるだけ加熱調理すること。100℃を目指して調理するのが無難です。(2)加熱直後に食べることです。調理で大部分が死んだとしても一部の菌が生き残っていることも考えられるので、保管中にこれが再増殖して食中毒を起こすことが有り得るからです。(3)まな板、ふきん、手などを介した2次汚染の可能性にも注意が必要です。肉など食品材料にはふつう注意がはらわれますが、原材料中の食中毒菌がまな板や手を介して調理済み食品を汚染することで食中毒を起こしたケースも多いので、注意が必要です。
食中毒の予防のためには日頃の健康管理が重要です。健康な体を保つと強い酸性の胃液が充分分泌され、口から入る多くの食中毒原因菌は殺されます。また、食中毒はO-157だけで起こるのではないことも忘れてはなりません。16種類もの菌が 食中毒を起こすことが分かっており、食中毒予防のためには、正しい、しかも幅広い知識を身につけることが大切です。

⑦ ネズミについて

Q:ハートワン付近にも、ネズミはいますか?
A:現時点で昼間はハートワン付近では確認されておりません。しかし、池袋の地下街にはかなりの個体がいると考えられます。何かの原因でハートワンの付近に来る可能性もあります。ハートワン動物病院では万が一も考え、壁はコンクリートです。床と壁のつなぎ目には昆虫も入れないようにシリコン樹脂で密閉しておりますので、ご安心ください。ネズミの侵入を防ぐことで、由来する感染症も防ぎます。ネズミ由来の感染症として、サルモネラ感染症、レプトスピラ症、腎症候性出血熱、E型肝炎などがあります。