整形外科

整形外科

整形外科について

整形外科は、骨・関節・靭帯・腱・神経・筋肉などの疾患を治療する診療部門です。
部位的としては脊椎、脊髄、末梢神経、口腔、四肢の関節などを、疾患としては先天性、外傷性 、変性性、腫瘍性、感染性、代謝性疾患などを扱います。
当院には、日本大学生物資源科学部研究協力員の委嘱を受けた経験豊富な外科のスペシャリストが在籍しており、専門性の高い特殊手術も多数行なっております。
また、Improve Internationalの外科コースにて専門知識・技術を習得しており、難易度の高い手術にも対応しております。
(Improve Internationalとは世界20カ国で小動物臨床獣医師の知識・技術訓練のための継続学習トレーニングを提供している国際機関です。)

当院では「心身ともに負担をかけない手術」を心がけております。
そのため、体への負担を配慮した麻酔薬プロポフォールや栄養コントロール、また精神的な負担も軽減できるよう、不安や痛みを緩和するためのケアを行なっております。

手術に対する基本姿勢

「飼い主様にとって動物にとって最適な方法で」

手術は適応不適応、また手術以外の方法も検討した上で最適な方法を提案します。

「心身ともに負担をかけない手術」

入念な準備

器具の準備はもちろん、複数の手術方法を検討・準備し、入念にシミュレーションを行います。

丁寧かつスピーディーに

大切な動物たちの体を丁寧に扱うことは大前提です。その上で、スピーディーに手術を行い、動物たちの身体への負担軽減を心がけております。

麻酔の時間短縮

手術による感染症を防ぎ、身体への負担軽減します。

手術時間の短縮

手術中は常に術野をクリアにして、可能な限り無駄な組織を損傷せず、傷を最小に抑えることで、身体への負担を軽減し、早期回復にも繋がります。
また、手術中に最も大切にしていることは体温を下げないことと、血圧を維持することです。
体温が下がると、免疫力が低下し、循環が悪くなり、薬の効果が下がってしまいます。
手術をスピーディーに行うことで、体温低下を防ぎます。
血圧は麻酔薬により下がる傾向があります。
血圧の低下は術後の回復に影響しますため、常に最適な血圧にコントロールしていきます。
手術後は、早期復帰のために有効なリハビリテーション治療プランもご提供しております。

主な整形外科外来の疾患

老化による関節炎老化による関節炎
骨折・脱臼骨折・脱臼
椎間板ヘルニア椎間板ヘルニア
レッグペルテス肘関節脱臼
肩関節脱臼仙腸関節脱臼
距骨滑車稜の骨軟骨症顎の腫瘍
顎の腫瘍

こんな症状がでたらご来院ください

  • 口が腫れている
  • 運動を嫌がる・散歩に行きたがらなくなった
  • 歩き方が不自然・足を引きずっている
  • ベッドやソファに飛び乗らなくなった
  • 肢を地面につけることができずあげた状態で歩いている
  • 肢に力が入っていない
  • 体や腰がふらつくようになった
  • 階段を上ることができなくなった

気を付けたい犬種・猫種

診断

問診

不必要な検査は動物への負担になる場合もございますので、まずはしっかりと問診を行い、普段の様子や症状などを把握させて頂きます。
(症状や経過を時系列で紙に書いてご用意いただきますと、症状の把握や診察をスムーズに進めることができます。また、口頭でのご説明が難しい症状の場合など、動画をご用意いただきますと貴重な情報源となります。他の医療機関様で受信された際の検査データなどがございましたらご持参ください。検査の重複を回避することで時間短縮や費用を抑えられる場合がございます。また、より迅速かつ的確な診断に繋がります。)

観察および触診

歩き方などを観察し、異常を見極めます。また、触診する事で骨折および脱臼箇所を特定します。

画像診断検査

レントゲン検査/CT・MRI/超音波検査の画像診断検査により脊髄の圧迫病変を確認、部位の特定を行います。

橈尺骨骨折(とうしゃくこつこっせつ)

橈尺骨とは、前肢にある2つの骨です、特に小型犬・超小型犬などでは落下などにより最も起こりやすい骨折です。
通常は橈骨/尺骨の両方の骨折が起こることが一般的ですが、それぞれ単独での骨折が起こることもあります。
特に多い、遠位骨折(手首に近い方での骨折)では少しのズレが歩行障害につながってしまうため、適切な整復が必要です。
また、この部位は周囲の組織が少なく、血流が乏しい骨のため、他の骨折と比べても癒合不全(骨がくっつかないこと)が起こりやすいので、適切な治療の選択が重要です。
粉砕骨折(2つ以上の骨折)は、さらに重症になってしまうケースもあります。
この場合は、より強固な固定が必要です。

治療

基本的にはプレートにより固定をする手術を行います。一般的なプレートに加えて、ロッキングプレートなどを利用して治療を行います。
その他、骨折の状況に応じて外固定(包帯のみ)、ピンニング、ワイヤー、スクリューで固定することもあります。

膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)

膝蓋骨とは膝のお皿です。膝蓋骨は大腿骨(ももの骨)にある滑車溝という窪みの中にはまっていて膝関節のなめらかな屈伸運動に役立っています。
外傷性の場合もありますが、先天性や発育に伴って発症する場合がほとんどです。
実際には滑車溝が浅かったり、膝蓋骨に付着しているじん帯や大腿四頭筋の内外のバランスの悪さなどが原因と考えられており、進行すると骨格の変形が起こりさらに脱臼を助長します。
膝蓋骨が滑車溝から外れる状態を膝蓋骨脱臼といい、特に内側に外れる膝蓋骨内方脱臼が多く見られます。

治療

発症年齢や重症度、症状の程度・経過、体重、飼育環境など様々な事を考慮して最適な術式を選択します。
グレードが低く症状も軽度の場合は、環境・生活改善や投薬により症状を抑えたり、骨関節炎の進行を抑制することも可能です。
膝関節の機能障害は膝蓋骨が継続的に脱臼することにより、悪化してしまう可能性があるため症状のある若齢犬に関しては早期に外科的療法を行う必要があります。
また関節軟骨が摩耗している場合には痛みが慢性化し関節炎へと移行していくため外科的療法が必要です。

術式には

  1. 滑車溝形成術
  2. 脛骨粗面転位術
  3. 内側/外側支帯の開放術
  4. 縫縮術
  5. LSS(ラテラルスーチャー法)
  6. TPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)
  7. 大腿骨骨切り術

などがあります。

単独で恒久的に膝蓋骨の再脱臼を予防するのは困難なため、それぞれ脱臼の状態や膝の形態に応じて術式を組み合わせます。
大腿骨の骨切り術は脱臼が非常に重度な場合に実施されます。
通常の膝蓋骨脱臼においては1から4までの手技を組み合わせて、手術する動物にもっとも適する形で手術を実施する必要があります。
よく行われる縫縮や滑車溝形成術のみでは再脱臼が起こりやすくなることが、報告されております。

椎間板ヘルニア

脊椎(いわゆる背骨)の骨と骨の間でクッションの役割を果たしている軟骨である椎間板に変性が起き、太い神経である脊髄の通る脊柱管内に椎間板やその内容物が飛び出てしまい、様々な神経症状を起こす病気です。
小さなヘルニアは通常健康には支障ありませんが、大きなものでは、飛び出た軟骨が神経を圧迫し、ひどい痛みを引き起こし、麻痺することもあります。

治療

発症年齢や重症度、症状の程度・経過、体重、飼育環境など様々な事を考慮して最適な術式を選択します。

1 頸部腹側減圧術 (ベントラルスロット)

頸部椎間板疾患において、脊柱管内に突出または脱出した椎間板物質を椎間に作成したスロットより除去し、頸髄への圧迫を取り除く治療法であります。

2 片側椎弓切除術

胸腰部椎間板ヘルニアで最も一般的に使用される術式であり、脊髄の片側に変位した椎間板物質の摘出に使用されます。

3 背側椎弓切除術

背側切除術は、脊柱管を構成する脊椎椎弓の背側部分を棘突起とともに切除する方法であります。
腰仙椎間にみられる椎間板ヘルニアや変性性脊椎症などに伴う脊柱管狭窄症など、いわゆる馬尾症候群の治療に対して使用します。